「郷社にはめずらしいコケがたくさんあるねえ」
結婚して間もなく泊まりに来た友人が言った。
そのころはちょっとした苔ブームだったと思う。
(ふうん、そうなんだ)
そのことをなんとなく覚えていたので、娘が小学校6年生の時、夏休み自由研究のテーマについて相談を受けたときに、
「コケを観察してみたら?」
と言った。
まずはマップを作ろうと言うことになり、ふたりで写真を撮りながら境内をぐるっと回ってみたが、
「全部同じに見えるねえ」
「たくさんあるのはわかったけどねえ」
図書館で借りてきたコケ図鑑と写真を見比べてみたが、
「どれも同じに見えるねえ」
「ぜんぜん見分けがつかないねえ」
こんな具合
でも継続は力なり(?)
夏休みの終わり頃にはこんなふたりになっていたのです。
8月30日(日)午後 ショッピングセンター内のミスタードーナツ店内
母 「あれ…地衣類かな…」
子 「うん…地衣類だね。」
ーふたりがじっと見ているのは、古いアメリカ風の煉瓦がプリントされている店内の壁紙
8月29日(土)午前 鹿島大神宮の境内
夏休みの自由研究の見直しをしている二人
子 「あ、ここにもスギゴケがある」
母 「ほんとだ、ぜんぜん気づかなかったね。
一応写真撮って」
子 「わあ、なんかここのゼニゴケ増えてる?」
母 「増えてる増えてる。
ネズミノオゴケも増えてる気がする。…
雨降ったからかな」
母 「あのハネヒツジゴケの写真、やっぱりまちがってたような気がするんだよね。おばあちゃんの盆栽の中にちょろっと生えてたのがハネヒツジゴケじゃないかな」
子 「そうかなあ。あれでいいと思うけど」
母 「それにしても、せっかく一学期の終わりに大越先生(スーパーティーチャー)が、こけマップを作るといいよってアドバイスしてくれてたのに、すっかり忘れちゃってたね」
子 「夏休みが始まってすぐにふたりでまわって下書きしたのにねえ」
母 「たいへんだったよね。そこらじゅうにこけはあるし、どれをみても同じに見えるしね」
子 「ここにもこけがある、ここにもこけがある、っていいながら写真撮ったね」
母 「写真見ながら図鑑で調べても、全然見分けがつかなかったしねえ」
子 「今は、ここにダイダイゴケがある、ここにはホソバオキナゴケがある、って言いいながらまわれるね」
娘の自由研究、コケを調べたらどう、とたきつけたのはわたしだったけれど、とんだ副産物があった。
勤務先の 駐車場に車を止めるなり、
「きれいなウメノキゴケね」
と桜の木の幹を鑑賞してしまうし、交通安全週間の当番で、高野小学校前で子供達の登校を待っている間にも、ついその周辺のコケの生育状況を調査してしまう。
(退屈しない人生になったなあ)
と新しく開けた世界を楽しみつつ、うつむきがちな毎日を送っている。
ちなみに自由研究の方は見所があったらしく、校長先生直々の手直し(親が全然見てやらなかったので、誤字が山のようにあった)が入って、もういちど清書し直したけれど、郡山市のコンクールで銀賞をいただいた。
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