船引町芦沢にある鞍掛山は、とてもきれいなところです。
4月の春祭には片栗の花がピンクのじゅうたんのようですし、5月のお湯立て神事の時には新緑が目に染みるよう。澄んだ空気の中に野鳥の声だけが響き渡ります。
5月の日曜日、中腹にある山津見神社拝殿前でお湯立て神事が行われました。古くからある火伏せの儀式で、氏子さん達は、釜でぐらぐら沸かしたお湯につけたクマザサの束でお祓いを受けます。
その青空の下、車座になった直会での会話
「昔はそこにずらっと茶屋が並んでたんだよ」
「一軒だけじゃなかったんですね」
「そうだよ。そこへずーっとあったの。今の鳥居はその頃農協の辺りにあったんだ。そこに『なかや』という旅館があって、信心する人はそこへ泊まってお参りに来たんだな。道路が広げられることになったんで、鳥居は今のところへ移したんだよ」
拝殿前に敷いたござの上で御神酒をいただきながら昔話が弾みます。
「こんなにいい御山なのに、水は出ないんですか?」
「前はそこんとこにきれいな水が流れてたんだけどな。山どじょうがいたよ」
「山どじょう?山どじょうってなんですか?」
「えーと、あれだよ。あの…手があるやつ」
「サンショウウオ?」
「そう!サンショウウオ」
「大きいやつ?」
「いや、ちんちゃい。このくらい(小指の第二関節)なにしろ飲んだから」
「飲んだ!?」
「そう、冷たい水と一緒につるっと飲むの」
「なんで?……元気もりもり?」
「そう、精力抜群!」
「ははあ」
「山どじょうは下に降ろさないうちに死んじゃうんだ。水があったまっちまうんだな」
「冷たいきれいな水でないとだめなんですね」
「そう」
楽しい話はまだまだ続きます。
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