平成31年2月3日(日)午前7時 鹿島大神宮ご神前にて
今日は節分
昨夜の風で散らばった杉っ葉を掃こうと参道の石段を上がっていたら、娘と犬が追いついてきた。
いつもは散歩中神社に登ったりしないのだけれど、私がいるのを見つけて登ってきてしまったのだ。
犬は7歳になる柴犬の雑種で名前はサツキ。
この辺では「うっつぁしい」と言われる元気なオスである。
サツキはいつもの元気さで熱心に石段を登り上げ、そのまま突進しようとするのを、娘にリードで引き留められた。
その時である
前を見たサツキが、ペタンッとしりもちをついたのだ。
そして、とってもびっくりしたように
「わんっ」
とひと声鳴くと、すわったまま瞬きもしないでご神前を見ている。
「えっ?」
「えっ?」
私と娘はご神前と犬を何度も交互に見比べてしまったが、私たちには何も見えない。
杉の木立ごしの朝日が拝殿の正面に清々しく差し込んでいるばかり。
けれどもサツキは、とても集中した顔でご神前の一点をずっと凝視している。
「サツキ?」
声をかけてもこちらを見ようともしない。
そのうちに、小さな声で
「きゅーん」
と鼻声をならした。
しばらくしてまた
「きゅーん」
まるでだれかに話しかけられて返事をしているみたいに。
ほどなくサツキは、視線はそこにくぎづけのままでパッと立ち上がると
「わんっ」
と一声鳴いた。
(あ、「もう行けよ」って言われたのかな?)
なんとなくそう思った。
サツキはなおも名残惜しそうに立ったままご神前を見つめていたが、やがて振り返りながら石段を降りていった。
「気をつけておりてね」
娘に声をかけてから、私はご神前をふたたびしげしげと眺めた。
後で娘と話し合ったこと
○サツキが見ていたのは、拝殿に登る階段の上あたりだった。
○サツキはとてもかしこまっていた。
なぜならサツキはこれまで散歩中にお座りしたことなんて一度もなかったのに、ご神前にいる間、ずっとお座りしていたから。最初なんか腰が抜けたみたいになっていて、しっぽもぺたんとなっていた。
○そこにいらっしゃったのは、サツキが一目置いているお父さん(宮司)よりえらいひと
なぜなら「きゅーん」という声が、いつもお父さんにおやつをもらう時よりずっと控えめだったし、かしこそうな顔になっていたから。
○「わんっ」という声が、とてもいい声で、りりしかった。
○とても慕わしい、けれども恐れ多いひとがそこにいらっしゃる、という感じだった。
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