「お茶でもいかがですか?」
この一言が私に雅楽の扉を開いた。
実家の駐車場の地鎮祭を終えた産土神社の神主さんに、私が掛けた言葉。
父を交えての世間話は、神社や神道に関する話題から、あの時人気のあった映画「もののけ姫」と古神道との関連まで楽しく続いたが、その中で神主さんが所属する群馬県雅楽愛好会についての話が出たのだ。
聞けば数年前より神職以外の人にもその門戸を開いたと言う。それも年会費5000円という安さで。
私は身を乗り出した。タダで笛を教えてもらえる機会は逃さない、というポリシーにもよるが、なによりその時の私にとって、雅楽はまさにタイムリーな話題だったのだ。
ちょっと前に私は新田次郎の『笛師』を読んでいた。
何代にも渡る笛師の人生の中で語られる笛づくりの興味深い工程やしきたり。
その中にちりばめられる雅楽の世界の美しくて不思議な言葉。
盤渉調、音取、越天楽… ラストシーンでアルプスの山々に響き渡った青海波とはどんな曲だろう。
いままで関心のなかった雅楽についての興味が次々に沸き起こってきた。
そこへこの話題だったのだ。
その場で私は雅楽愛好会に入ることを決めてしまい、数日後には神主さんが練習用の龍笛を届けてくれた。
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