昔話への想い その3 ー 典ちゃんの昔話 郡山市西田町 ー


言っておくけれど、西田町は昔話の宝庫である。


別にそんなに鼻息を荒くしなくてもいいのだけれど、しかしだれもそのことに気づいていない、もしくはなんとも思っていないようなのだ。


郡山市には、湖南町という豊かな昔話をもつ地域があり、湖南の人達はそれらを大切に語り伝えて、子供たちに伝え、子供たちもまた誇りを持って自分の故郷の昔話を語り継いでいる。

けれど、西田町もまたたくさんの昔話を持つ地域であるのに、それらが語られるのを聞いたこともなければ、子供たちも触れる機会がほとんどない。

なんとももったいないというか、今伝えなければ絶えてしまうだろうと思うのだ。


ところで、宮司の母、今年83歳になる典ちゃんは、実に西田町の生き字引みたいな人である。

小さい時分から見聞きしたことを、とてもよく覚えていて私に話してくれる。

ー舘の呼ばり石の話、郷社のむかし、四季折々のしきたりや行事、当時の子どもの遊び、などなどー

いそがしい日常の中、はじめはただそれを楽しく聞いているだけだったけれど、やはり書きとめておきたいと思うようになった。


そして、町内のあちこちにある小さな神社で、祭りの後に語られる昔語りというものがある。

それらの神社では、今でも囲炉裏を囲んで直会(なおらいー祭の後にお供え物などをいただくことー)をする所がいくつもある。

ちょっとのぞいてみると、こんな感じ。

ー 通りに車をとめて、やっと人が一人通れるほどの細い山道を登っていく。今日は祭。下草も刈られ、落ち葉もきれいに掃き清められている。小さいが由緒のあるご社殿では、さっき豊年を感謝する秋祭りが終わったところ。中では参列者と神職が囲炉裏を囲んで、楽しげに語り合っている ー

囲炉裏には炭火が真っ赤に熾っており、鉄鍋からは湯気が立ち上って、ぐつぐつとおいしそうな音がしている。
煮えているのは、さっきのお祭で神様にお供えした野菜や魚など。
味つけは神社によって味噌だったり醤油だったり。仕上げに卵を入れるところ・お代わりにうどんを入れるところ・それはそれはおいしくて、どうしたってお代わりをせずにはいられない。

そこで語られる昔語り

ー 自分が小さい頃の祭のこと、父祖から伝わる昔の祭、地域に起こった忘れられない出来事、今はもう絶えてしまった行事や催しなどなど ー

話は尽きない。

後数年を経ずして消えてしまいそうなこれらの、地域に住む私たちにとってこそ大切な昔話の数々を、なんとか残す方法はないものか…

ありがたいことに今の時代、ウェブサイトやブログなど、書いたものを発表するツールはいくらでもある-


というわけで、このたび鹿島大神宮のウェブサイト開設にともない、「西田町の昔話」のカテゴリを無理矢理押し込んだ。

今までちょっとずつ書きためてきた昔話を、そして郡山市教育委員会の許可をいただいて、教育委員会編纂の

『郡山のむかしばなし』『郡山の伝え語り』『郡山のことばとくらし』

から、西田町のお話をピックアップして載せることにした。


一気に載せたので、一時は「いったい何のウェブサイトなの?」というような有様で、新着記事は、しばらくずっと昔話ばかりだった。

在庫を放出しちゃったから今は落ち着いたけれど、これからも、昔話を順次載せていくつもり。

ぜひ鹿島大神宮のウェブサイトもご覧ください。


これらたくさんのお話を、ぜひ西田町の子ども達に読んでもらいたい。

そして今自分たちが住んでいるこの土地に、父母や祖父母や、ずっと前のご先祖様もまた、豊かに生き生きと暮らしていたのだ、と言うことを感じてもらいたいと思っている。






鎮守の森にようこそ

神社や鎮守の森でおこった出来事、社務をとりながら考えたことなどをつづりました。  禰宜 雅子

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